セロリとアライグマ
「新伊さんが『汚い』『汚れてる』て思うものに少しでも触ったり、その空間にいたりすると、自分も汚れてくるような気分になって、その汚染を想像してしまうだけで不安になって何度も何度も不安が消えるまで手を洗う…ってことじゃないかと思うけど。そういうの、『強迫性障害』っていうの」

でも、オレはまだ『強迫性障害』というモノが何なのかイマイチ分かっていなかった。

「普通の人の心配の限度を超えてる、って言い方も変かもしれないけど。『汚れた』って感じることですごく不安になって苦しくなって、それを予防や中和をしたい、強迫観念を追い出したいという気持ちが強迫行為である『手を洗う』という行動に走る、ってチラッと本で読んだ事あるけど」


オレは新伊の言葉を思い出していた。


『長い時間手を洗わないでいると、すごく不安になるし、自分が汚れてしまう気がして怖くなる』


確かに彼女はこういった。

まさしく姉の言う事にあてはまるのだ。

驚いた。

漠然と『潔癖症』と決め付けていた。

皆も「潔癖症だ」と口々に言うからそう思い込んでいた。

適当にそう思い込んでいたんだ。



オレはこんなに流されていたなんて。

みんなが言うからそれが本当だと思っていた。

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