セロリとアライグマ
何分か過ぎ、オレは自分の部屋を出て姉の部屋に入る。

オレの部屋と比べ異様にキレイな姉の部屋には、ネットにつながったパソコンがある。自分でバイトしたお金で買ったモノだ。
家にはパソコンは一台しかないのに姉はなかなか使わせてくれなかった。

それでも、姉のいない間は勝手に部屋に入って使っていた。


とりあえずパソコンの電源を入れ、インターネットを立ち上げる。

そして『強迫性障害』と打ち込み、検索した。結構色んなサイトが出てくる。


「…どれから見て行くかな……」


オレは夕方までカチカチとマウスを動かし、強迫性障害に関するサイトを見ていた。

なぜ新伊の病名を調べたかったのかは分からない。新伊に関わりたいわけでもない。だが、新伊が『手を洗う理由』を知りたかった。


なぜ、新伊は手を洗わないとダメなのか。

単純にそれを追求したかった。




夕方6時過ぎ、オレはバイト先のコンビニでレジを打っていた。
もう一人は店内でポリッシャーをかけている。

オレはレジ打ちをしながら今日パソコンで調べたことを考えていた。

強迫性障害はまれな病気ではなく、一般人口の2%くらいにみとめられるということや、新伊のような『手を何度も洗う』ということだけではなく、鍵を本当にかけたか不安になって何度も確認をしたり、ガスの栓をしめたかどうか何度も何度も見に行ったりすることで不安を解消しようとする行動も強迫行為、つまり強迫性障害と呼ばれることも分かった。


知らなかった。
そんな名前の病気を知らなかった。


ていうか、新伊もきっとそんな名前の病気があることを知らないんじゃないだろうか。


新伊の場合、特に教室にいることによって、モノに触ったりずっとそこにいたりすることで自分が汚れてくると感じ、何度も手を洗って不安を取り除こうとするみたいだ。


1年の時は別に何度も手を洗わなかった新伊。

一体何がキッカケだったのだろうか。

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