セロリとアライグマ
このままもう一度机の引き出しにPHSを戻したい。その方がラクだ。

だが、その様子を他の奴らに見られたくない。

ていうか、あの女子5人組には特に見られたくない。


新伊のPHSだと分かったら、これを水に落としかねない。


新伊は授業が終わると委員会や掃除が無ければさっさと帰ってしまうので、もう学校にはいないはず。

オレが今日持っていて明日こっそり渡せばいいかもしれないが、電話がきたりしたら何となくイヤだ。


困った。



しかたない、新伊の家まで届けるか。



前コンビニで会ったとき、そこから10分ぐらいだと言っていたし、オレの家からもそんなに遠くはないだろう。
チャリで行けばすぐのはずだ。

住所はクラスの住所録みればすぐ分かる。


とりあえず、早くこの携帯を手放してしまいたい。



オレは新伊の携帯をポケットに入れたままさっさと掃除を終わらせ、急いで学校を出てチャリを走らせた。おそらく20分ぐらいで着く。

さっさと渡してさっさと帰りたい。そう思った。



すぐに新伊の家くらい見つかるだろうと思った。

だが、道が結構入りくんだ住宅街で、なんだかよく分からない。
やはり初めて来る所だからコンビニで地図くらい見ておくべきだったか。


自転車を走らせていたら、日は山の方へ少し傾いていた。


これから日は短くなる一方だ。寒くなるし、雪は降るし。

何よりチャリ通学できないのが一番痛い。
オレはバスが大嫌いだ。

とりあえず家の近くまで来たと思うので、チャリを降りて歩いて新伊の家を探した。

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