セロリとアライグマ
ていうか、オレは一体何のためにこんなことをしているんだろうか。

別にオレに利益があるわけでもないのに。

オレと新伊が仲がいいわけでもないのに、オレは何をやっているんだろう。


まぁ、新伊に会ったら例の話を少ししようかなとは思っていたけれど。


『強迫性障害』。


新伊にとって、きっとクラスにいると汚れるという「強迫観念」から、手を洗うという「強迫行為」に走るんだろう。



ではなぜクラスにいると汚れると思うんだろう。いじめられるからか?


それだけだろうか。


そんなことを考えながら自転車を押していたそのときだった。




「山崎くん?」

後ろから聞き覚えのある声がした。

振り返ると、そこには制服姿の新伊が立っている。

右手にはスーパーの買い物袋、左手には大きな紙を丸めて持っていた。ポスターだろうか。


「新伊」

「やっぱり山崎くんだった。どうしたの?あ、バイト?」

「いや、バイトはこないだやめたから――あ、これ」

オレはポケットから新伊のPHSを取り出した。

「あれ?ワタシのピッチ?」

「掃除してて、机動かしてたら引き出しから落ちてきたから。忘れたの今井や兼古達に見られたら捨てられるぞ」

PHSを手渡すと、新伊はにこっと笑った。

「ありがとう!ごめんね、わざわざ家までもって来てくれたんだね」

「…鳴ったらオレがヤダし」

「電源切っておいてくれてもよかったのに」



あ、そういえばそうだ。

オレって結構バカだ。そんな事にも気づかなかった。

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