セロリとアライグマ
新伊は頭をぽりぽりと掻くオレを見てくすくすと笑う。


オレはふと新伊が持っているポスターに目をやった。

「なに、それ?」

「あ、これ?見る?」

新伊はスーパーの袋を地面に置き、両手で持っていたポスターをスルスルと開く。

すると、そこには鉛筆で下書きされた「美化月間」という文字があった。
それと箒とちりとりの絵。


なんだ、これ?

ん?待てよ?



「これって……」

「うん、美化委員が作るポスター。期限明日なんだ」

「こんなのもらったっけ?」

「山崎くんがバイトで委員会出なかった時に配られたの。先週の金曜だったかな。ちょっと忙しくて出来なかったから期限ギリギリになっちゃった」

そういえば先週の金曜はバイト最後の日だったから委員会をサボったんだった。

ていうか、なんてどうでもいい委員の仕事だろうか。

「別にそんなもん出さなくたっていいじゃん」

「うちのクラスだけ出さないわけにもいかないし。今日家で適当に仕上げちゃおうかなと思って持って帰ってきたんだ」

新伊はにこにこ笑いながら話す。

学校では決して見られない表情だ。


トイレで手を洗ったり無表情でウェットティッシュでかばんを拭く新伊からはとてもこんな笑顔は想像できない。

ていうか、そもそもこのポスター、美化委員の仕事なんだからオレに「手伝え」と文句を言えばいいのに。

新伊はそんな事一言も言わない。



オレに迷惑かけたくないとでも思っているんだろうか。

……。

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