セロリとアライグマ
仕方ない。

「いや、いいけど…」

「よかった。うち、弟二人部活で帰ってくるの7時ぐらいだから。母親も仕事で遅いから家に誰もいないから気兼ねしなくていいよ」

それを聞いてちょっと安心した。さっさとポスターに色塗って帰ってしまおう。

オレは新伊の後を自転車を押して歩き出した。


新伊の家はここから歩いて3分くらいのところにあった。なぜ見つけられなかったのか、オレは。

決して大きいとは言えない一軒家。

玄関フードの棚には野球のグローブが二つ。弟が使用しているのだろうか。ついでにサッカーボールもある。

新伊はカバンから家のカギを取り出し、ガチャンと開けた。

オレは新伊の後に続いて玄関に入る。

 
すると、新伊は、玄関の棚に自分の通学用カバンを置いた。そして靴を脱いで中に入る。

「?」

普通、玄関にカバン置くか?自分の部屋に持っていけばいいのに。

新伊は、まるで汚いものを見るようにカバンをじっとみてから、棚においてあるタオルでカバンを拭く。

オレの目から見て決して汚れてはいないと思う。

オレはその光景をみて唖然としていた。

するとそれに気づいた新伊は振り向いてオレを見た。


「山崎くん、先に二階上がっててくれる?階段上がって右側がワタシの部屋だから」

「いいけど…」

「15分ぐらいで済ませるから待ってて。ごめんね」

オレは新伊に言われるがまま玄関で靴を脱ぎ、そのまま二階に上がった。

新伊は何故かダッシュで居間の方へ走っていったようだ。



何だ?何がどうなっているんだか。

やはりこんなところ来なければよかったと少し後悔した。

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