セロリとアライグマ
ただ単に山崎まさよしと同じ名前だっただけで、オレのあだ名は『セロリ』になってしまった。

山崎まさよしが「セロリ」という曲を歌っていただけなのに。

そいつらが『セロリ』と呼び始めると、クラスのみんながオレを『セロリ』と呼ぶ。

なんだそれ。

オレとセロリの共通点なんて全然無いのに。
ていうか、野菜じゃねーか。


オレはこのあだ名が全く気に入らない。



「ジャンプは見せてもいいけど、課題はみせねーよ。見せてほしかったら『セロリ』って呼ぶなよ」

「あーっケチくさいなぁ、山崎くーん。しゃーねぇ、誰に見せてもらうかなー」

佐野はすぐオレの簿記の課題を諦め、立ち上がって教室をぐるぐる歩き回る。
そして、廊下側に座っていた女子二人に話しかけ、そいつに簿記のノートを借りて自分の席についた。

それを見てオレは「バーカ」と小さくつぶやく。



窓の外は雨。

この様子だと、今日の体育の授業は外でマラソンの予定だったが体育館でのバレーボールになりそうだ。

よかった。マラソンは大嫌いだし。

なんでマラソンなんて授業でやらなくちゃならないのか意味が分からない。
走って苦しんで何が楽しいのか。



窓の向こうをボーっと見ている時だった。


ガタンと横で椅子を引く音がした。その音で右の方を見た。

オレの隣の席の新伊 久麻(あらい ひさま)が席についてカバンから簿記の教科書とノートを取り出す。


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