セロリとアライグマ
「…あのさぁ」

「?」

「…メシ、食べていってもいい?」

「え?」

オレの声は小さかった。ていうか、なんだか恥ずかしかった。

なぜそんな事を言ったのかというと、姉の留守電の内容が原因。


『えっと、おねーちゃんです。今日、お母さんパート仲間と夕ご飯食べに行ったから。私、これから合コンだからバイバイ。ご飯用意してないから自分で食べてね。お父さんも会議で遅いって行ってたから戸締り宜しく』


バカ姉キ。すげームカツク母親。

メシぐらい用意していけ。

こっちはこの間ゲーム買ったから財布に三百円しか入っていない。バイト代はまだ下ろしていないし。

一度新伊の誘いを断った手前、ものすごく気まずかった。



「うん、食べていって。でもどうしたの?」

「いや、母親が…パート仲間とメシ食いに行ったみたいでさ…姉キは合コンだっていうし……」

オレの言葉を聞き、新伊は声を上げて笑い出した。こんな新伊初めて見た。

笑った顔、結構かわいいのに。

学校でも笑えばいいのに。



だけど、手を洗う『アライグマ』は学校ではきっと笑えない。

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