セロリとアライグマ
1時間後、オレは新伊の家の食卓に座っていた。

そしてかぼちゃコロッケとサラダとタコの酢の物を食べている。


テレビでは9月なので特番ばかり。クイズ番組のスペシャルが流れていた。

新伊は忙しそうに食卓にさっさとおかずとご飯と味噌汁を並べた。

オレは新伊に呼ばれて2階から降りてきて食卓に着くと、同時に二人の弟が帰ってきた。
一人はコンビニで見たことがある。
サッカーぽいユニフォームをジャージの中に着ている。

もう一人はその弟より少し背が小さい。
泥のついた野球のユニホームを着ていた。
新伊に早く着替えろと指示されていたが。



オレは何ともいえない緊張のなか新伊の作ったご飯を食べた。

普通においしかった。

弟二人は部活のことを色々新伊に話している。

新伊は笑いながらそれをうんうんと聞いていた。
面倒見のいい姉ちゃんといった感じ。


オレはそれを横目に、黙々とご飯を食べていた。


最近母親はこの時間パートに行っているし、オレもゼミに通っているから、暖かいおかずと暖かいご飯を食べるのは久しぶりだった。



そのうち弟二人は一気にご飯を3杯おかわりしてガンガン食べ、さっさと2階に上がっていった。

さすがにオレはあそこまで勢いよく食べれない。
のんびり味噌汁を飲んでいた。



「ただいまー」

玄関の方から声が聞こえ、居間にグレーのスーツを着た女の人が入ってきた。

髪はショートで快活そうに見える。

オレの母親とは違い、体系は細身。中年太りしていない。

40歳くらいだろうか。とても若く見える。


顔はなんとなく新伊に似ていた。


「あら?」

その人はオレに気づき、足を止めた。

「あ、お母さん、同じクラスの山崎くん。ワタシ、今日学校にピッチ忘れちゃって。届けてくれたの」

オレは思わず味噌汁の器を勢いよく食卓に置き、立ち上がった。

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