セロリとアライグマ
新伊、就職希望だったんだ。結構頭いいはずなのに。

ていうか、父親がいない?え?

「あの、母子家庭なんですか……?」

オレが聞きにくそうに言うと、新伊の母親は少し笑ってうなずいた。

「ええ。父親は3年前にガンで死んだの。3人子供がいるから私がとりあえず働いて。まぁ家は残してくれたからなんとかやっているけれど。あの子には苦労かけっぱなしでなんだか申し訳ないわ」


知らなかった。

新伊、父親いなかったんだ。

学校でもそんな話聞いた事も無い。


だから部活もバイトもしていなかったのか。
家に真っ先に帰って家事をしていたのか。



「……山崎くん、一つ聞いてもいいかしら?」

「え?」

オレはゴクンと息を呑む。一体何を言われるんだろう。

新伊の母親は少し顔をしかめた。



「……あの子、学校で何回も手を洗っている?」


オレは目をそらした。

これって、言ってもいいことなんだろうか。
母親は知っているんだろうか。

いや、学校から帰ってすぐ風呂に入っていればなんとなくおかしいことぐらいは気づいているはずだ。

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