セロリとアライグマ
「……強迫性障害、じゃないんですか?」

「山崎くん、よくその言葉知っていたわね」


母親は驚いて目をまるくしてオレを見ていた。

そりゃそうだ。
普通こんな言葉知らないだろう。

ていうか、どうやら母親は新伊が強迫性障害じゃないかということを疑っていたようだ。


「オレの姉キが短大で心理学専攻してるんで。話、聞いたんです」

「そうだったの。私も気になって調べたの。そしたらそういう神経症があるんだと初めて知ったわ。強迫性障害は、人によって恐怖の対象や恐怖への考え方が様々みたい。あの子にとって、恐怖の対象はどうやら学校のようだわ」

「……」


何もいえなかった。

新伊は母親にきっと知られたく無いはずだ。

アライグマとバカにされていることや、カバンにコーヒーをかけられている事、自分の周りにゴミを捨てられていること。

オレが新伊の母親にそのことを告げてはいけない、そう思った。



「担任の先生からも連絡あったの。『クラスで疎外されているから協調性を持つよう本人に指導してほしい』って。でも、あの子は家ではそんなそぶり全然見せない。私に心配かけないようにしているんだろうけど。不器用な子でね、耐えることしか出来ない」


オレはとりあえず、担任の田崎がむかついた。

アイツ、何のつもりだ?何がクラスで疎外されている、協調性をもつように指導してほしい、だ。バカじゃねーか。

お前が見て見ぬフリしてるくせに。関わらないようにしているくせに。




ていったら、オレも同じか。

オレだって、関わりたくないと思っていたんだから。



サイアクだな、オレも。

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