セロリとアライグマ
「あ、そうだ!山崎くん!!」

「?」

 新伊はにこっと笑った。

「この前、ハンドクリームありがとう」

「え?」

「私、トイレで手を洗ってる時、カバンにおいていってくれたでしょ?ずっとお礼言いたかったんだ」

「え?あ、ああ。あれ、その辺で配ってた試供品だから」

オレはなんだか照れくさくなり、ブンブンと新伊に手を振った後、急いでペダルをこぎだした。

暗い夜道を自転車で走るオレは、新伊の母親の話と新伊の部屋で見た手帳の内容を思い出していた。



やはり、見るんじゃなかった。

あんな苦しそうな日記。




オレには新伊の笑った顔が痛い。

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