セロリとアライグマ
「……ごめん」

オレはなんとなく新伊に申し訳なくなって一言謝った。

「謝らないで!私こそゴメンね。山崎くんに迷惑かけちゃった。最初は病院とか行くのやだったんだけど、病院にいって少しでも手を洗わなくなれば…何か変わればいいなとワタシもやっと思えたの。逆にいいキッカケが出来たから山崎くんに感謝してるんだ」

「…別に感謝されるような事一つもしてない」

「そんなことないよ。ホントありがと。お母さんにもワタシの事分かってもらえてすごくうれしかったんだ」

新伊はオレに素直に自分の気持ちを話す。

それがオレには何となくうれしかった。



「…少しでも手、洗う回数減るといいな」

オレは新伊に笑いかけた。

新伊はにこっと歯を見せて笑った。


「うんっ」


遠くの方で、バスが走る音が聞こえた。

オレの高校の回りは結構静かで車どおりも少ないからバスが近くに来るとすぐ分かる。


「バス、来たんじゃねーの?」

「あ、ホントだ!山崎くん、自転車気をつけて帰ってね」

新伊は慌ててバスに向かって走りだした。

そして遠くでオレに向かって叫んだ。


「山崎くんっっ前期美化委員、おつかれさまー!バイバイ」



こないだ新伊の家に行った時に家族に見せていた笑顔と同じだった。

オレは小さく手を振った。

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