セロリとアライグマ
10月の半ば、やっと中間テストが終わった。

教科は期末に比べて少ないものの、やはり勉強は普段以上にするので結構疲れた。

夕べは歴史の教科書と参考書をずっとにらめっこしながらチェックマーカー引いていた。

出来はまぁまぁ。歴史は嫌いじゃないからそこそこの点数をとれそうだ。

それよりも、リーダーの方がやばそうだ。オレ、英語嫌いだし。
これじゃゼミに通っている意味が無い。

まぁ過ぎた事はどうこう言っても始まらないので、とりあえず今日は佐野とカラオケに行く約束をした。

佐野はGLAY歌うとはりきっていた。

あまり似合わないと思うが、佐野は確かそこそこカラオケうまかったはず。

オレはいつもの通りイエモンとかラルクでも歌うのかな。



と思っていたら、テストが終わるとなんとホームルームが長々と始まった。

なんでも後期の委員を決めるらしい。

さっさとカラオケにいけると思っていた佐野はがっかりしていた。

オレは前期委員やっていたから別に関係の無い話だ。
早くみんな適当に決めちまえと思っていた。



ボーっと窓の方を向いていたら、真ん中の列に座っている新伊に目が留まった。

新伊は、すこしずつではあるが手を洗いに行く回数を減らすよう努力しているんじゃないだろうかと思う。

前は毎時間10分は洗いに行っていたが、今は少し時間が短くなったように感じる。

カバンをむやみに拭かなくなったし、時々ゆっくり深呼吸をしながら気持ちを落ち着かせているようだった。

おそらく病院に通い治療を始めているのだろう。
新伊と会話する機会は全然無かったが、それは見ていて分かる。


時々目が合うとにこっと笑った。


新伊なりに笑顔をとりもどそうとしているように見えた。

オレはそれをみてちょっとホッとしていた。



それでも他の人間と比べればやはり手を洗う回数は多いから、未だに女子からは「アライグマ」と呼ばれているみたいだ。

時々筆入れを隠されたり、体操着の入った袋を廊下に出されていたり。



それでも新伊はがんばって耐えていた。
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