セロリとアライグマ
いつかそれも終わるんじゃないかな。

人間て案外飽きっぽいから、嫌がらせに飽きてくるんじゃないだろうか。

今井達もそろそろ分かってくるころだろう。

クラスのヤツだって新伊が普通になったらシカトしたりしないよな、多分。



「よし、学級代表は引き続き和田がやってくれる。書記も決まったし、あとは委員だな」

田崎はなぜか張り切って声を上げる。

オレは、新伊の母親の話を聞いてから田崎が『ムカツク』から『大嫌い』になった。

だから田崎と目を合わせないようにしていた。


委員を決めるときは、大抵皆うつむく。田崎と目を合わせないようにする。

オレは単純に嫌いだから目を合わせないけれど。

しばらく沈黙が続いていると、窓側の方で一人が田崎に挙手もせず話しかけた。



「センセー、ワタシ、新伊サンを美化委員に推薦しまーす」



今井だった。


隣の席の安西とPHS片手に茶髪のキューティクルのはげた髪をとかしながら笑っている。

皆いっせいに今井の方を向いた。
そして横目で新伊を見る。

オレは真っ先に新伊に目をやった。

新伊は驚いた表情をして固まっている。


「今井、新伊は前期も美化委員やってるんだぞ」

田崎は困った(ようにみえるだけかもしれないけど)表情を浮かべる。

「べつにいいじゃん、何回やったって。和田さんだって学級代表二期連続でしょ?美化委員もそれでいいじゃん。それにさ、別に対した仕事ないんだったら委員一人でもいいんじゃないの?前期だってアライグマ一人でやってたようなもんだし」

「賛成―。キレイ好きだからいいじゃん」

安西はなにがおもしろいんだか分からないが、アハハハと笑っている。


ていうか和田は自ら立候補してるけど、新伊はお前らが勝手に推薦してるだけだろ?!



オレは顔が引きつった。

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