セロリとアライグマ
こいつら、怖い。

そして他に文句を言うヤツがいないクラスのヤツもある意味怖い。



「まぁ別にいいよね。うちら、関係ないし」

「そーそー。新伊さんやればいいじゃん」

「早く帰りたいよねー。私今日予備校なんだよね」

「ワタシ、部活に遅れちゃうー」

「ていうか、今井サンに嫌われたらもー終わりだね、ホント」

「超こわー。ワタシじゃなくてよかったー」



ざわざわと皆口を開く。


そうか、皆、自分がよければどうでもいいんだ。

自分に被害が無ければなんだっていいんだ。

新伊がどんな表情をしていようと、どんなに苦しんでいようと、何だって構わない人間ばかりだ。



「新伊、いいのか?」

田崎は新伊に話しかける。

ていうか、なにが「いいのか?」だよ。

普通「二期連続はかわいそうだ」とか言って止めるだろ?!!

バカじゃねーのか?アイツ!!


「……」

新伊はうつむいたまま何も言わない。

ていうか、腕が少し震えている。
そして必死に手の平を見つめて、額からは汗が少し流れていた。


おそらく手を洗いたくなっているんだ。


前、今井が捨てたゴミを拾ったときも、高西がコーヒーを新伊のカバンにかけたときもそうだった。



オレは、何か言いたかった。

でも、何を言っていいかわからなかった。


斜め前の席の佐野がオレの方を振り向き、口パクで『女ってこえー』と遊び半分で口を開く。

オレはそれを無視して新伊をじっと見ていた。



新伊、断れよ!!

そう願っていた。



「他に美化委員に立候補するヤツいないか?」

田崎がのんきにそんな事いう。

ホントこいつ大バカだ。新伊の様子みて何も分からないのか?!



ああもうっ

仕方ない。

「…じゃオレ、美化委員でもいい」

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