セロリとアライグマ
「サト、それマジ?」

「マジマジ。だってワタシ見たもん。薬の袋持ってたし。精神安定剤でも飲んでんじゃないの?キモ~」

新伊が出ていて、数分過ぎてからこそこそと今井と伊藤が喋っている。

するとそれにつられて回りもガヤガヤと騒ぎ始めた。


「ちょーキモくない?精神科ってやっぱおかしい人が行っちゃうわけでしょ~?」

「そーだよね、手、洗いすぎだよね、あの子」

「やだ~。ホント近づきたくない」

「ホント学校来ないでほしいよね」




あ、そうか。

今やっとオレは確信した。


新伊は、このクラスの『汚れた心』を洗いに行っていたんだ。



そうだな、そりゃそうだな。

この中にいたら感染しそうだ。


人を憎み、バカにする「汚れた言葉」「汚れた視線」「汚れた行動」。

新伊は染まりたくなかったんだな。それを家にもちこみたくなかったんだな。
触ったらうつりそうだ。


オレまで吐き気がしてくる。


 
でも、新伊のことを知るまではオレも皆と同じだった。

見て見ぬフリをし、面倒なことに関わりたくないと思うオレ。

オレもおんなじだ。汚ねーな。



ホントきったねぇ。

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