セロリとアライグマ
大丈夫だよ、新伊。

お前はおかしくなんかない。


おかしいのは、『普通』だと思っているオレ達なんだから。

新伊は手を洗うのを我慢して、薬飲んでれば手を洗うことをやめれるのかもしれないけれど、オレ達クラスの人間は、つける薬がないんだ。

 
この集団の汚れた心に、効く薬なんてないんだから。





結局委員は決まらなかった。

ホームルームがぐだぐだのままチャイムが鳴った。

皆何も無かったかのように帰る準備をし、掃除を始めた。


今井や伊藤も、新伊のことなんて速攻で忘れて、今日これから街に買い物に行ってどこでプリクラを撮るか相談している。



オレは真っ先に体育館に続く廊下のトイレに走った。

ゆっくり女子トイレのドアの窓を覗くと、やはり新伊が手を洗っている。

泣きそうな顔で必死に必死に手を洗ってる。



ここから解決の道は見つかるんだろうか。

何をどうやったらうまくいくんだろう。




それでもオレには何も出来ないんだ。


友達でも彼女でもなんでもない新伊に、何も出来ない。

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