ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に 2
『僕の母は中学二年生の時に他界している。』


身上書の中に書かれてあった身の上話の一つ。
それを目にした時、ぎゅっと胸が痛くなった。


『母は乳癌だった。社長の秘書や家事で奮闘している日々の中で、病は思っている以上に早く進行を続けていた。
おかしいと思い検診を受けた時は既に遅く、リンパ節への転移は免れていないだろうと診断された。
僕も父も母に休養するようにと求めた。丁度会社が株式への上場をし始めた時期と重なり、母は体調を理由に休むなんてできないと言い張った。』


その一連の事情を説明している部分には、少しだけ文字が乱れているところがあって……


『僕は母に対して何もしてやれない自分がもどかしかった。中学生という子供でいることを凄く歯痒いと思った。』


大人だからと言って、何かをしてやれる訳ではないだろうと思う。
でも、子供でいれば、ますますしてやれることは少なくなる。


『母の役に立ちたいと思い、家事も引き受けたし、食事を作るのだって面倒だとは思わなかった。』


家のことを助けたが為に、友人との関係を形成できずに中学生活を終えたと記されてあった。


『自分は人よりも早く大人になる必要があると感じていた。』


お母さんの亡くなった後、落ち込みの酷いお父さんを助けなければいけないと思ったそうだ。
だから、高校でもなるべく好成績を残すよう努力を続けていたらしい。


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