ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に 2
母を亡くしているという事実に同情をしているつもりではなく、ただ一人で寂しさを乗り越えてきたであろう社長に、一人ではないんだと伝えたい気持ちばかりが働いていた。


「私がいますから」


それこそ何の助けにもならない存在だとは思うけど。


「寂しくなったら、私が一緒にご飯を食べてあげます!」


上から目線もいいとこ。
一度目の定食屋さんも二度目のお蕎麦屋さんでも、支払いをしたのは社長なのに。


「これからだって社長が行こうと誘えば、どこだって付いて行きます!いつだって、呼んでくれても構わないですから!」


社長のことが心配というよりも気になる。
私の知らない社長のことをもっともっと知り尽くしてみたい。



(私……)



ぎゅっと手の平を握りしめた。



(この人のことが好き……)



見たこともない優しい顔をして笑えるんだと知った。
人付き合いが苦手な訳ではなく、経験値が低いだけだとわかった。

そのままで大人になったから接し方がわからず怖さを感じる時がある。
上手く言葉が出ずに切れそうになった契約を弟の大輔さんがカバーしてきてくれている。


『大輔とは血の繋がらない兄弟だけど、僕にはないものを持つ大事なビジネス上のパートナーとして認めているよ。』


大事なことはきちんとわかっている。
兄としても社長としても、祐輔さんは大輔さんのことを家族として認めている。



(だから、私も……)



< 103 / 191 >

この作品をシェア

pagetop