ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に 2
オフィスを出て30分後には社長の自宅へ到着していた。
続きは自宅で…とは言っても、できるような雰囲気ではない。



「お帰りなさいませ」


玄関先でハウスキーパーの女性が迎える。
緊張気味に社長の背後に立つ私に睨みを利かせ、無遠慮に爪先から頭の先までを眺めた。



「ただいま。鈴木さん」


壮年層の女性の名前を呼び、靴を脱いで上がろうとする彼。


「…あの、こちらの方は?」


私の方へ目を向け、鈴木という女性が尋ねる。


「ああ、オフィスで秘書をしている片桐さん。僕が寝不足なもんだから運転を代わってもらったんだ」


シャワーを済ませたら着替えて再び出社すると伝えると、鈴木さんは納得したように頷き、社長の背中を見送った。


「…あっ、そうだ」


振り返った人の目が私を捉える。
ドキッとする胸の音を聞いて、彼の目を見返した。


「片桐さんも中で待っておいてくれ。鈴木さん、彼女を和室へ通してあげて」


それだけ言うと、自分はヨロヨロしながら廊下の奥へと向かって歩く。

私は鈴木という女性に睨まれたカエルようにオドオドとして、彼女に上がるよう促されるまで動けなかった。



「こちらでございます」


先導されるがままついて行った。
和室というのを聞いて、社長は私が和室好きだというのをリサーチしているのかと思った。


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