ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に 2
「社長のお母様は、幾つで亡くなったんですか?」


最初に思ったことを質問した。
鈴木さんは遺影に目を向け、「38歳です」と教えてくれた。



(38……)


ボンヤリと頭の中で反芻した。


「先代の奥様は24歳の時に祐輔さんを出産されたそうですから」


祐輔さんと砕けた言い方で呼び、それでは…と立ち去る。
一人にされた和室の中で私は手足を動かすこともできず、ただぼぅっと仏壇に飾られた遺影だけを見つめた。



今の自分と同じ歳で子供を産んで、その子が成人になるのを見届けもできずに亡くなった母親。


どんなに歯痒い気持ちでいただろうか。
切なくて哀しくて悔しくて……堪らない気持ちだったと思う。


その人を側で見守り、見送らなければならなかった人達のことを考えると胸が迫った。
私自身はまだ、祖父母すらも見送った経験がない。

きっと辛い気持ちは半端ではなかったはずだ。
寂しさや憤りを乗り越えていくのには、かなりの年数とエネルギーが必要だったはずだ。

中学二年生で大人になろうとした。
落ち込む父親を励まし、支えていこうとした彼を思うと切ない。


ウルッと涙が溢れそうになり、自分が泣くべき立場じゃないんだと思う。


やっぱりここに来ても思うことは同じ。
社長のことをぎゅっと抱きしめてあげたい。
一人じゃないから…と励ましてやりたい。


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