ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に 2
グスッと鼻を吸って目頭を押さえた。

廊下から聞こえてくる賑やかな足音と声に気づき、ちらっと障子の方を振り返った。




「ここに通したんだな」


障子の向こうから声がして、直ぐに戸が開けられる。
戸の向こうから入ってきたのは男性で、その後を追うように、女性も一人入ろうとしている。



(会長……!)


顔を確かめて驚く。入社式で見かけた人だと、すぐにわかった。



「お、おはようございます!」


座布団から滑り降りるようにして挨拶をした。
私の前に仁王立ちしていた会長は、少し間を空けてから座り込んだ。



「おはようございます」


太い声でしっかりとした口調で挨拶された。
恐縮する私に向かい合うように正座した女性も、優しい声色で「おはようございます。初めまして」と続いた。


顔を上げると、その女性はニコッと優しく微笑んだ。
誰かに似ていると思い、そうだ…と頭に浮かべる。



(大輔さんのお母さん…!)


くっきりとした二重まぶたの目元がそっくり。
それに、目鼻立ちがはっきりしている所も似ている。


驚きを通り越して二人を見つめてしまった。
どうしてここへ来たのか、サッパリ意味もわからない。



「あの……お邪魔しております……」


そうだ、何も断りをしてなかった。


「秘書をしております、片桐真綾と申します」


もう一度深く頭を下げた。
顔を上げると会長は嬉しそうな笑顔を湛えて言った。


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