ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に 2
「女」と言われた私は抵抗を感じた。
あくまでもここには、秘書として社長を送りに来ている。


「この部屋で待たせると言うからには特別な女性なんだろうから、顔くらい見ておこうかと思って」


なぁ…と同意を促され、奥さんは困った様に頷き返す。

社長は苦々しそうに唇を歪め、諦めたように息を吐いた。



「…そのうち、ちゃんとした形で連れて来るから」


短い言葉で説得を図り、とにかく向こうへ行けと追い出す。
奥さんからも同じように言われた会長は、ブツブツと小言を繰り返しながら出て行った。


障子が閉まり、足音が遠くなるのを確認してから社長の目が私を見る。



「済まない。親父はどうも子供っぽいところがあって……」


髪の毛をガシガシとタオルで拭いて謝った。

その様子を見つめながら、視線をどこへ持って行こうかと迷う。



「あの…何か着て来られませんか?」


迷った挙句お願いするように聞いた。
社長はそうか…と笑い、立ち上がってから私に言った。


「それが僕の母親。さっき居たのも同じだけど」



若干照れた顔つきが子供らしかった。
二人のお母さんに育たられた人は、「真心」という「愛」に包まれているように見えた。



着替えに行ってから戻ってきた社長は、すっかり出勤モードになっていた。

いつも通りのスーツ姿が2割増し以上カッコよく見えるのは、きっとさっき見た裸のせいだろうと思う。


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