ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に 2
「ちょっと拝ませてくれ」
脇を通っていく人に「どうぞ、ごゆっくり」と声をかけた。
社長は焼香の手順を踏んでから、細く見える長い指先を合わせた。
頭を下げている彼と一緒に、自分ももう一度深く首を項垂れる。
はぁ…と息を吐く声が聞こえ、ゆっくりと顔を上げてみた。
社長の目はお母さんの遺影に注がれていた。
その眼差しの行方を追い、ぎゅっと胸が迫った。
「母さん…。母さんが言っていた『真心』と読める人だよ」
独り言を言ったのかと思うと振り返り、私のことを呼び寄せる。
膝小僧を畳に擦りながら近づくと、ぎゅっと手を握った。
「僕が愛を送りたい人、片桐真綾さんと言うんだ。やっと連れて来られた。いつも噂ばかりで気を持たせたけどね」
写真に注がれていた目線が私の方へ向く。
にっこりと笑いかけられた微笑みは、私の一生の宝物になるだろうと思う。
「僕と結婚を前提に付き合ってください」
照れた表情も初めて見た。
思えばあの身上書を受け取った日から、私は事ある毎に社長の初めて見る顔ばかりを知った。
「私を…特別な人の一人にしてくれるんですか?」
ドキドキと胸を弾ませて窺うと、社長は熱い眼差しを送ってくれた。
「君以上に特別な人間はいないよ。誰よりも君が一番特別で、一番大事だ」
そういう言い方をされるとは思わなかった。
ダメダメな男に恋して、甘やかされる事ばかりを夢見てきたけど………
脇を通っていく人に「どうぞ、ごゆっくり」と声をかけた。
社長は焼香の手順を踏んでから、細く見える長い指先を合わせた。
頭を下げている彼と一緒に、自分ももう一度深く首を項垂れる。
はぁ…と息を吐く声が聞こえ、ゆっくりと顔を上げてみた。
社長の目はお母さんの遺影に注がれていた。
その眼差しの行方を追い、ぎゅっと胸が迫った。
「母さん…。母さんが言っていた『真心』と読める人だよ」
独り言を言ったのかと思うと振り返り、私のことを呼び寄せる。
膝小僧を畳に擦りながら近づくと、ぎゅっと手を握った。
「僕が愛を送りたい人、片桐真綾さんと言うんだ。やっと連れて来られた。いつも噂ばかりで気を持たせたけどね」
写真に注がれていた目線が私の方へ向く。
にっこりと笑いかけられた微笑みは、私の一生の宝物になるだろうと思う。
「僕と結婚を前提に付き合ってください」
照れた表情も初めて見た。
思えばあの身上書を受け取った日から、私は事ある毎に社長の初めて見る顔ばかりを知った。
「私を…特別な人の一人にしてくれるんですか?」
ドキドキと胸を弾ませて窺うと、社長は熱い眼差しを送ってくれた。
「君以上に特別な人間はいないよ。誰よりも君が一番特別で、一番大事だ」
そういう言い方をされるとは思わなかった。
ダメダメな男に恋して、甘やかされる事ばかりを夢見てきたけど………