ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に 2
轟家では、家族は皆一つの家に住むべきだという考え方がある。

祐輔さんのお母さんが亡くなった後、家族の変化が掴める位置に住んでいないとダメだと、会長であるお義父さん自身が気づいたからだ。


「蛍と私が子供を産んだら一緒に育てていけるし、妊娠のことも育児のことも相談し合えるから便利じゃない」


「楽天的だ…」と呆れられた。
でも、その楽天家なところが本当の私だ。


「その方がお義父さんやお義母さんも楽しいと思うよ。今時珍しい家庭環境だけど、うちのオフィスは玩具メーカーなんだから、その方がきっと子供の気持ちがわかっていいと思う」


部屋に行って飲みましょ…と、トレイにカップを乗せて歩き出す。


私達の部屋は中二階の奥にある和室。
結婚する前から祐輔さんのお部屋だった場所で、そこに初めて通された時は蔵かと思うくらい、暗い雰囲気が立ち込めていた。


それでも初めてお泊まりをした時の不思議な感覚と言ったらなかった。

まるで深海の奥に眠る様な感じで、物音もせず、グッスリと深く眠れたんだ。


おかげで今や私は、この部屋でないと夜もろくに眠れないくらいに気に入っている。

レセプションやパーティーに招かれた後も家に帰ってくる訳は、この部屋でのんびりゆったりと過ごしたいからだ。



「真綾はダラダラするのが好きだな」


呆れながら話すけど、祐輔さんだってダラダラだ。


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