ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に 2
服装は私以上に砕けている。
オフィスではいつもカチッとしたスーツに身を包んでいるせいか、家の中ではスエットでいることが多い。

しかも上下が揃ってなくて、常にバラバラな感じ。
上着の中に手を突っ込んでお腹を掻いていたり、ズボンが垂れそうになってても穿いている時がある。


少しは羞じらいみたいなものがあってもいいように思うけど、「飾っても仕方ない」と彼は言い張る。



「真綾は俺の手駒みたいなものだから何を見せてもいいんだ」


戦略とか作戦とか気にしなくていいという意味らしい。

私以外の女子と付き合っている時は、常に作戦とかを考えていたんだろうか。



「私を食事に誘おうと決めた時も無策だったの?」


結婚を前提に付き合い始めた時に聞いたことがある。
その時の彼は、真剣な眼差しでこう言った。


「あれは最後の手段だと思って真綾の家に電話をした。緊張し過ぎて、心臓が飛び出るかと思った」


意外にも弱気な一面を聞いて爆笑した。
あの時のことを思い出すと、今も自然と笑えてくる。




「……なんだ?」


前に比べると幾らか抑揚のある話し方ができるようになった。
そんな祐輔さんの側にいることが、私の一番の癒しだ。



「何でもないの!」


ニッコリと笑ってミルクティーを飲んだ。
これからも、彼といろんな一面を見せ合っていけたら嬉しいなと願っている。







『社長と秘書』おしまい。
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