ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に 2
事情については深く説明せずにいる私の顔を窺い、当時の社長でもあった主人は「良ければその事情を聞かせて下さい」と言った。



「えっ、あの…」


一瞬、言い淀んでしまった。
話してもいいのかと迷い、思わず身構えてしまった。


ちらりと視線を向けると、社長の眼差しは真剣だった。
個人的な事情を真摯に受け止めようとする態度を信じ、これまでの生活のことを手短に教えた。


「……実は、離婚した主人が借金を抱え込んでいて、その返済がしたいからです」


前夫には悪い癖があった。
アルコールを飲むと暴れる…というタチの悪い癖のおかげで、私と大輔はいろいろと苦労を重ねてきた。


様々な飲み屋で借金を作って逃げだした。
離婚届に名前と印を押していってくれたのは、せめてもの罪滅ぼしみたいな気持ちが心の何処かにあったからだと信じたい。



「離婚したら返済する義務は生じないのではないですか?」


社長の言葉に狼狽えた。確かにその通りだとは思ったけれど……。


「私にはなくても血縁関係にある息子には生ずるかもしれません。

それに、別れた主人が借金を重ねてきたのも私が至らなかったせいだとも思えますし、作った本人が逃げたからと言って、支払わなくてもいいという考え方は嫌いです。

夫婦でいた頃の責任として支払いたいんです。バカなことかもしれませんが、負債を残したまま人生を送るのは嫌だから……」


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