ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に 2
おかげでこうして五人で生活をしているが、実際顔を合わせて生活するとは言っても朝くらいのもので、それぞれの仕事もあるし帰宅時間も異なる。
朝食の時間だけは決まっているから、その時間には全員が集まるようにしていた。


朝食を作るのは、私と家政婦の鈴木さんの仕事。
祐輔さんの妻で彼の秘書をしている真綾さんが担当するのは、週末くらいのものだ。

独り者の大輔は、土曜も日曜も朝食を食べ終えると決まって何処かへ出かけてしまう。

いい大人だから何をしているのかと聞いたこともないけれど、ある日の朝、電話をかけてきてこう言った。



「会わせたい人がいるからそこに居てくれ」


言葉少なくそれだけ言って切った。
宿泊先のホテルの部屋でその電話を受けた私は、呆然と携帯を握りしめていた。




「大の奴、何だって?」


主人は親しみを込めて「大」と呼ぶ。実の子供でもないのに、これまで本当によく面倒を見てくれた。


「何だか知らないけど、会わせたい人がいるからホテルに居て欲しいそうなの」


昨夜はレセプションがあり、主人と二人でホテルに泊まった。

妻になっても二人きりの時間を大切にしてくれる人だが、やはりそこには亡き奥様にはそういう孝行をしなかったという後悔があるんだと思う。


「会わせたい人?女か?」


ワクワクした表情で尋ねられた。
祐輔さんが真綾さんを初めて家に連れて来た時と同じような雰囲気を醸し出している。


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