ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に 2
「貴方が大輔の味方をするなら私は祐輔さんの味方をするわ。彼だって大した人間よ。

中学生の頃、たった一人で貴方やお母さんのことを支えようとしたんだから」



秘書になりたてだった頃、一人で家事を背負っている祐輔さんを見た。

中学生だったのに、部活もせずに一生懸命だった。

母親との別れも乗り越えて、感情を押し殺して頑張っていた。



「そう言われると俺は情けなく聞こえるな」

「あら、私だって情けない母親なのよ」


二人で顏を見合わせて笑った。
再婚して以来、そんな話をして笑ったことが何度もある。


「お互い、いい子供に恵まれたと言うことか。親としては情けない話だけど、その分子供がしっかりしている」

「そうね」


親だと言っても完全ではない。

その役割を十分に果たしてきたのかどうかすらも怪しい。


けれど、この人は夫しては十分に私に尽くしてくれる。
亡くなった人の分まで愛してくれて、彼女にはできなかったことを全て私にしようとしてくれる。


亡くなってまでも愛されているのは前妻だと感じる。

私はそんな彼女が羨ましくて仕方ない。


彼の後ろにいるであろう彼女の存在に嫉妬を覚える時もある。

私はずっと、彼女の代わりでしかないのか…と悩む。


大事にされる訳も彼女が亡くなっているからだろうか。

この人に心から愛される時は、いつかやって来るのだろうか。

来たとしたらそれはいつで、自分の命が終わる日なんじゃないのかーー。


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