ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に 2
今からでも遅くないと思うなら、是非そうして欲しいと願う。


「子供の母親としてよりも、妻としてよりも、貴方の恋人でいたいんです」



結納とか式は挙げなかった。
息子二人の前で指輪を交換して、キスを額に受けただけの誓い。

その時は、家族四人で幸せを分かち合おうと誓った。
でも、息子達にはそれぞれの幸せを分け合う相手ができた。


「もう二人だけの幸せを求めてもいいと思う。貴方さえ良ければ、それを是非とも誓って欲しい」


じっと顏を眺めてしまった。

ゴルフで日焼けした顔の目尻が下がり、深い皺が目元の辺りに寄る。

大好きな人の笑顔が見れて幸せな気分が高まり、乙女のように胸の音が鳴り響いた。



「誓うよ。これからは…いや、これまでもそうだったけど、これからはそれ以上に君しか見ない。
二人で添い遂げよう。共に白髪となっても周りが羨むような恋人でいよう」


ぎゅっと握り合った手の平の中には、互いの苦労が感じられる。

この手を握り返してくれる人がいることに感謝して、今日からまた新たに恋人として歩き出す。

社長と秘書から会長と奥様になった私達には、今日から男女としての人生が待ち構えている。



「香菜子さんには報告しておく?」

「それは後からでもいいだろう」


重ねられた唇にも愛を感じ、私達は時間の許す限り、二人きりの甘い時間を過ごしたーーー。







『会長と奥様』おしまい。

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