ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に 2
ピアス僧侶と花売り娘

幼馴染みの二人

「解せないわ」


愛車の助手席に座った女は、ボソッと囁きのように呟いた。


「あの人が大ちゃんの彼女だなんて信じらんない」


黒いサマードレスの足元は膝を組み、上になった左足の先はユラユラと空を彷徨っている。


「あんな人見知りな女、大ちゃんとは絶対似合わないから!」


さっきからずっと文句を言っているのは、どうやらさっきまで一緒にいた女性のことらしい。



「…ねぇ、兄さんはどう思う?」


振り返った表情は怒り気味で、逆らうことを言えば噛み付いてきそうな雰囲気だなと思ったけれど。


「いいんじゃねぇのか?大輔の好みなんだろ」


ストレートでストンとした髪の毛も、真っ赤になって恥じらうところも、きっとあいつの胸に刺さるものがあったんだろうと思う。


「間違ってもお前みたいな女は相手にされねぇよな」


市民ボランティアの責任者として働く友人の顔を思い浮かべながら言った。


「もういい!」


俺の言うことが気に入らないらしく、助手席の妹は更に拗ねる。


ガキのようにふくれっ面になって黙った。
車内は禁煙にしているけど、イライラしている様子からして1本吸いたいところだろうと察する。


妹と俺は三つ年の離れた兄妹だ。

俺は崎山健太朗(さきやま けんたろう)といい、妹の名前は純香(すみか)と言う。

さっきから妹に大ちゃんと呼ばれているのは幼馴染で、フルネームは轟 大輔。


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