ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に 2
今日はボランティア連中との集まりが仲間の店であって、そこへ大輔は初めて女を連れてきた。


仲間の前で「彼女だ」と言って紹介した。
これまでは女がいても「彼女」だと言って紹介してくれたことはない。


紹介された本人は恥ずかしそうに俯いていた。
見た目大人しそうな感じで、確かに純香の言う通り、パッと見は不似合いなのかもしれないと思った。

でも、彼女の横に立つ大輔は更にカッコ良さを増しているように見えたし、その横で顔面を紅く染めている彼女は淑やかそうに見えた。


まんざら不似合いでもないんだろうな…と考え直す。

愛車のポルシェを運転しながら幼い頃の記憶を呼び覚ますと、壮絶すぎる家庭環境の中で育った奴が、よくもまあ、あそこまで真っ直ぐといい大人になれたもんだと感心する。



大輔の父親はアルコール中毒症で、飲むと別人になると評判の男だった。
家は自営業で、水道の配管工をしていた。

母親はその会計を一気に手負い、羽振りはそれ程悪くもなかったろうと思う。
俺の思い出せる限り大輔が生まれて間もない頃は、親父さんも飲んで暴れることはなかった気がする。


それが不景気の波に押されて、仕事が少しずつ減り始めた頃から変化が現れだした。
元から酒好きだった親父さんは、朝から酒を飲んでいる日が多いと聞いた。

大輔よりも歳が上だった俺は、子供ながらにお袋さんの愚痴をよく耳にしていた。


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