ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に 2
保育園からの帰り道、何度か見かけたことがある。
飲み過ぎて酔い潰れて道端で眠っているおじさんのことを。
真っ赤な顔をして大イビキをかいていた。
大ちゃんが揺すっても起きなくて、そのうちおばさんが迎えに来る。
おばさんの顔には赤い内出血が幾つもあって、大ちゃんがスゴく心配そうに見つめていた。
「お母さんが殴られてる」
そう言って泣いたのは小学校に上がる前だったろうか。
飲むのをやめろと自分が言ったら、生意気なことを言うなと向かってきた。
「俺を庇ってお母さんが殴られるんだ。なんも悪いことしてねーのに、なんであいつは手を出すんだ」
悔しそうに園着のスモックの裾を両手で握りしめていた。
溢れそうで溢れない涙を堪えて話す大ちゃんの姿に心底胸がキュンとした。
姉にでもなったつもりでしがみ付いた。
同じくらいの身長だった大ちゃんが驚いて、ヒュッと息を吸い込んだ。
「私だけは味方だからね!」
絶対に絶対に大ちゃんを守ってあげる。
おじさんがどんな暴力をしてきても、必ず守り通してあげるーー。
子供の頃の記憶にしては忘れられないものがある。
あの時、大ちゃんは初めて私に涙を見せた。
肩に額を乗せて鼻水を吸う音を聞いた。
小刻みに揺れるカラダの振動を一度だって忘れたことはない。
(この人には、そんな経験ないでしょう……)
飲み過ぎて酔い潰れて道端で眠っているおじさんのことを。
真っ赤な顔をして大イビキをかいていた。
大ちゃんが揺すっても起きなくて、そのうちおばさんが迎えに来る。
おばさんの顔には赤い内出血が幾つもあって、大ちゃんがスゴく心配そうに見つめていた。
「お母さんが殴られてる」
そう言って泣いたのは小学校に上がる前だったろうか。
飲むのをやめろと自分が言ったら、生意気なことを言うなと向かってきた。
「俺を庇ってお母さんが殴られるんだ。なんも悪いことしてねーのに、なんであいつは手を出すんだ」
悔しそうに園着のスモックの裾を両手で握りしめていた。
溢れそうで溢れない涙を堪えて話す大ちゃんの姿に心底胸がキュンとした。
姉にでもなったつもりでしがみ付いた。
同じくらいの身長だった大ちゃんが驚いて、ヒュッと息を吸い込んだ。
「私だけは味方だからね!」
絶対に絶対に大ちゃんを守ってあげる。
おじさんがどんな暴力をしてきても、必ず守り通してあげるーー。
子供の頃の記憶にしては忘れられないものがある。
あの時、大ちゃんは初めて私に涙を見せた。
肩に額を乗せて鼻水を吸う音を聞いた。
小刻みに揺れるカラダの振動を一度だって忘れたことはない。
(この人には、そんな経験ないでしょう……)