ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に 2
見せても彼女が引かないとわかってる。

それでもって、どんどん距離を縮めていってる。


「…なぁ、俺前に言ったよな。大輔はお前には振り向かねぇって。視界に映ろうとしてもムリなんだって思わねぇか?
お前はそこらの景色と同じカンジで、女としては映らねーの」


さすがに酷く言い過ぎただろうか。
ムッとしていた妹の横顔が歯痒そうにも見える。


「……あの女、大ちゃんの前では自分を偽ってんのよ」


口を開けばそんな人を陥れるようなことばかりを言う。


「あんな女が大ちゃんの彼女だなんて、絶対に認めたくない!」



「認めろよ」


俺はもう一度純香を振り向いた。


「大輔の目には、お前は女としては入んねーって」




ドン!!


思いきりダッシュボードを殴りやがった。



「うるさい!!兄さんは黙ってて!!」


がなり立てるように叫んだ。

苛立つ気分のままで、ドン!ドン!と繰り返しダッシュボードを叩く。



「純香!」


さすがに温厚な俺でも頭にくる。
車を止めて道端に寄せると妹の両手首を掴んだ。



「やめろ!!」


読経をする時のように低い声を発した。
ビクついた妹の動きが一瞬だけ止まる。


「お前がどんなに思っても願っても、通じないことはあるんだ。もういい加減に子供っぽいことはやめて、大人になれよ!」


長年の片思いなんてするな。

お前には違う相手がきっといる。



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