ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に 2
「…泊まってけよ」


離れていった唇がそう言って囁く。
「イヤ」とか「ダメ」とか、そんな言葉が言い出せない雰囲気で、まるで魔法の呪文のようにも聞こえる。

服の下で大きく跳ね上がるくらいに心臓が鳴って、声も出せずに頷くだけになってしまう。


部屋へ行けばあのどんぶりで飼われたキャリコ金魚に出会って、大輔さんの指に吸い寄ってくる姿に嫉妬を覚える。

大きなベッドでこれ以上ないくらい大事に扱ってもらえる瞬間、私はまるで本物の姫にでもなったかの様な気分に襲われる。

身体中の力が抜けてしまい、全身が大輔さんの一部になったかの様に思う。


それを考える自分が恥ずかしくてなって、きゅん…と胸が鳴り響いた。




「…あ、でも、着替えだけは取りに帰りたい」


ふと現実を思い出した。
先週は結局、真綾の服を借りてご両親にお会いした。
オフホワイトのノーマルワンピだったから、印象としては悪くなかったと思うけど。


「泊まる度に真綾に相談というのも恥ずかしいし……」


顔が熱くなる私の頭を抱いて大輔さんが笑う。

その後で走りだした車の行く先は、家ではなく、いろんなブランド品を扱うブティックだった。

そこで頭から足元までのトータルコーディネートをされ、ついでに言うなら、際ど過ぎる下着までプレゼントされた。



(こ…こんなのって、いつ付けたらいいの……)


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