ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に 2

私でなくても良かった……

「ん……」


彼の腕の中で目覚めた翌朝、私の脳裏には純香さんの言葉が浮かんだ。



『3回もしたら飽きるんだから』



瞼を開けてぼぅっと見定める視界の中に映る彼の輪郭。
半ば開いてる唇から漏れる呼吸に合わせて息をした瞬間、これ以上ないくらい幸せな気分に浸れるんだけど。



(もしかして、これも後1回きりでおしまいになるの?)



ぎゅっと抱きつくたくなって、でもやっぱり遠慮する。

体を動かせば起きてしまうと思い、どうしようかと迷った結果、そろり…と背中を向ける。


向ければ相手は離すまいとして近寄ってくる。

背中の上部に生温かい皮膚の感触が広がり、後頭部では髪の毛同士が縺れ合って擽ったい。

密着しているのは昨夜からも一緒の筈なのに、無防備な彼が背中側にいるというだけでドキドキの種類の異なる。



触れ合う度に彼のことが好きになっていくのに。

誰にも渡したくないという独占欲がどんどん深くなってしまうのに。


(3回ヤったら飽きてしまうの?今回のお泊りが2回目だとしたら、次の後は飽きられてしまう……?)


不安になり、ぎゅっと布団を握りしめた。
肩を竦める私に気づいたらしく、後ろから腕が伸びてくる。



「ケイ…」


指を絡めるようにして繋ぎ、肩口にキスをする。

唇が頬に近づいてくるのを温もりで感じて、ぞくっとしたまま身体中に力をいれた。


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