ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に 2
多分大輔さんには、お父さんに関するセンチメンタルな感情はないんだ。

全てはあのお寺の中で流した涙が完結させていて、過去のことだと割り切ってしまってるんだろうか。


(だったら私が慰めてあげることも無さそうじゃん…)


あの人はきっと強い。
私が心を添わせなくても、多分何でも解決していける。



(純香さんもいるし………ね)


幼馴染の彼女だけじゃない。

羅門さんや健太朗さんといった、長年付き合いのある友人やボランティア仲間もいる。


そんな人達に比べれば、私との付き合いなんて浅いもの。

大事な秘密を一つ明かしてくれたにしても、ホタルが死んでしまえば、その一つが減るだけ。

減った分、特別な関係じゃなくなる。

それだけじゃないのに、どこか虚しい感じがする。




『怒ってるのか?』


困り顔のスタンプを付けてきた。


『何を?別に怒ってないよ』


『それにしては様子が変だ』


『変じゃないよ。大輔さんの勘違い』



私は大輔さんのアッサリ過ぎる感情に不満なだけ。

もしもホタルが死んでしまったら、こっちは寂しくなりそうな気がしているのに。


(ちっともそんなの考えてないっていうか、そもそも死んでも構わないとか思ってる?)


憎んでたお父さんが残した金魚。

仕様がなく面倒を見始めたにしても、愛情とか愛着とか、全く湧きもしなかったんだろうか。


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