ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に 2
「あんなヤツの持ってたものでも形見って言うのか?」

「そりゃ…勿論そうでしょ!?」


思わず言い返した。


「ホタルは大輔さんのお父さんが生前飼い続けてきたのよ?思い出話とか特にしてくれる相手でなくても、大切な形見でしょ?」


自分の名前も付いてるし…と、それはさすがに言えなかったけど。


「癒されてきたでしょ?飼い始めてから」

「ああ。ケイみたいに口をパクパクと開けるから」

「だから、私じゃなくてお父さんの形っ……」



見…だと言えずに唇を押し付けられた。

大輔さんのキスは強引で、少し強く吸われた。


「……俺は、あいつの形見だなんて一度も思ったことはねぇよ」


離れた口先からそんな言葉が漏れた。


「俺がホタルを連れて帰ったのは、ケイのことを見てる様な気がしたからだ。例えばあれが普通の赤い金魚だったとしたら、多分持って帰ったりはしなかった」


真剣な眼差しで言われると、それが本当のように聞こえる。


「今朝起きてホタルを見た時、ケイに連絡をしたのはそれでだ。昨夜会わなかったから何かあったんじゃねぇかと危惧した。
…まぁ幸いにも直ぐに文字が流れてきて、何もないと安心したけどな」


私の前から離れ、自分も背中を壁に付ける。
並ぶように立った位置からこっちを向いて、口元を少し緩めた。


「そこへケイが様子を見に行ってもいいかって言ってきたもんだから嬉しくなってしまってさ。

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