ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に 2
「……まさか、その言葉を間に受けたのか!?」


「ち、違うの?」


「あーーもうっ!そんなの簡単に信じ込むなよ!」


歯痒そうに言い返した。


「だったら、彼女と別れる度に純香さんに縋るっていうのもウソ?古傷見せれるって言ったのも、純香さんにだけじゃないよね?」


疑問を投げ掛ける私に唖然とした表情を見せる。

何かを考えついたように目を逸らした後で、「そう言えば一度だけ縋ったことがあるな」と言った。



「それいつの話!?」


壁から背中を離して向き合う。
大輔さんは顎下に右手の親指と人差し指を当てながら、思い出を探るように答えた。


「確か小学校に入学前…だったかな。あんまりクソ親父のことが歯痒くて純香にグチったことがある。
あん時は家の中がピークに近いくらい荒れてて、母さんが毎日のように殴られてた。
俺はいつも守れてばかりだったから悔しくて、思わず涙が溢れたんだ」


大輔さんの話では、その時の純香さんはまるでお姉さんのように力強かったそうだ。


「『私が守ってあげる!』って俺と同じくらいの背格好だったくせに抱きしめて言うんだ。

その時は恥ずかしさもあって顔を上げれなかったけど、後にも先にも純香の前で泣いたことなんて、それ一回きりだぞ」


呆れたヤツだな…と大輔さんは呟く。

純香さんの言うことを信じるなと注意されていたにも関わらず、私はすっかり惑わされていた。


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