ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に 2
大輔さんの親友と付き合ってた聖は、つい先日入籍を済ませた。

私よりも先に妻になれたことで、真綾の結婚式の時に貰ったブーケが効いたと喜んでる。


「私は羅門のガイドみたいな感じで付いて行くの。だって折角習ったイタリア語が活かせる場所が日本には少な過ぎるんだもん」


本場へ行って使ってくるわね〜と張り切る。
向こうへ行っても、きっといろんなことに挑戦してるような気がする。




「花嫁さん、お式が始まりますよ」


世話役のウエディングプランナーさんから声をかけられた。

周りにいた人達は式場の方へと向かい、私は父と一緒にチャペルへの廊下を歩く。


両親に大輔さんを紹介した日から一年弱が過ぎ、今日のお式へとコマは進んだ。



「……早かったなぁ」


父はそう言いながら、これまでの幸せを噛みしめる。


「ケイが生まれた日には、お母さんの実家の近くで沢山の蛍が飛び交っていてね。
あまりに幻想的で綺麗だったもんだから『蛍(けい)』と名付けたんだよ」


今更のように教えられた事実に驚く。


「いろんな人の命が生まれ変わってきたのかなぁと思った。…ほら、蛍は人の命の灯火だとよく言うだろう?
だから、きっと人並み以上に幸せになれるだろうと信じた……」



父の話を聞いて、胸がいっぱいになってしまった。

名前に込められた意味を知り、あの夏祭りの日に大輔さんが言った言葉を思い出した。


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