ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に 2
早くも食べ終えた副社長がケイを見てる。


(ふぅん)


恋人の眼差しってこんな感じなんだ。



(優しそうだなぁ)


ケイ、あんたってばホントにイイ男ゲットしたんだね。




ひたすら食事をし続け、気づいたら店を出ていた。



「ご馳走様でした」


車に乗り込む前、副社長にお礼を言った。


「パスタもオムレツも美味しかったです。私の分のお会計まで払って頂いてすみません」


彼女でも何でもないのに。


「いや、それはいいけど」

「そうよ、聖」


車のドアを開けたまま、二人が私の方を向く。


「羅門はどうする?」

「料理よりもそっちがメインだったんじゃない?」


「…あっ、そうか」


私としたことが、すっかり忘れてしまっていた。


「あんまり食事が美味しくて意識してなかった」


呆れるケイの顔にゴメンと手を合わせる。

どうする?と聞き直す副社長に丁重に断った。


「私、やっぱり男はいいです。今回は見送らせて下さい」


二人に残念そうな顔をされた。

だって私、気づくと副社長のことしか目に入ってなかったもん。


「羅門の方から紹介して…と頼まれたらどうする?」


それは無いと思ったけど、もしもあったら大切な出会いの一つだと思ったから……


「その時はお願いします!」


厚かましく頼んで車内へと乗り込んだ。

夜のバイパスを走り抜けながら、私は副社長の横顔ばかりを後部座席から眺め続けていたーーー。



< 20 / 191 >

この作品をシェア

pagetop