ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に 2
『会いたいんだって』…と連絡がきたのは、翌日の午前11時頃のこと。
エアコンが直らず、茹だるような暑さが続く経理部から逃げ出して、トイレの個室にこもった時だ。


(へっ…?)


誰が?…と悩んだ。
間もなく短いメロディが流れ、LINEのメッセージが送られてきた。


『羅門さんが、聖に会いたがってるんだって』


驚きのスタンプが二つもくっ付いてきた後、次の質問が……


『どうする?』


(えっ…どうしよう……)


単純に焦った。
まさか向こうからオファーがあるとは思ってもなかった。


う~ん…と迷ってから、少し考えさせて欲しい…とメッセージを送り返した。
野性的にも見えた男の鋭い視線を思い出し、ハテナ…?と首を傾げる。


(あの人がナゼ……?)


昨夜は挨拶を交わしたきり、他の話はしなかった。
あの男は私よりもケイに興味があるらしく、彼女をからかってばかりいたから。


(そんな人が私と……?)


納得がいかないと思いながらトイレの個室を出る。

経理部のあるフロアは最上階に近い。
会議室も二つもあるから上役達が常にウロウロしている。


今朝も中会議室ではクリスマスに向けた戦略会議が行われていた。
昨夜の店で裏メニューのラーメンが食べたい…と言っていた人が現れたのは、私がトイレから出た時と会議の休憩とが重なった時だ。



(あっ……)


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