ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に 2
「そうか」

ホッとしたような顔つきになる。


「羅門に言っとく。時間は君の都合に合わせるそうだから何時がいい?」


そろそろ休憩時間の終了が近づいてきたらしく、壁かけ時計をチラ見する。


「19時なら確実に上がれます。(こりゃ午後からもピッチ落とせないな)」


密かに考えながら答えを出すと、わかった…と声が響く。


「19時に迎えに来るよう言っとく。場所はまたケイに伝えておくよ」


踏み出した靴の先がドアの方へ向いた。


「時間取らせて悪かったな」


ドアを開けながら謝る。


「いえ」


肩を竦めて了承すると、ニヤリと意地悪そうな笑みを浮かべた。




「そのメガネ、似合うな」

「えっ」


じゃ!と言って出て行く。




「なっ……」


なんだ、今の褒め言葉は。

思わずドキン…と胸が鳴ったじゃないか。
相手はケイの彼氏なのに、キュン…と、ときめいてしまった。



(あー、なんかヤバイ)


胸の音が変だ。


会議室の中で、一人勝手にソワソワしだす。
思い出してもいけない人の笑みを脳の中で反芻してしまった。




(ダメダメ!)


相手はケイの彼氏で、ここのオフィスの副社長。
私は昨日初めてその人のプライベートな部分を知り、興味が湧いているだけだ。



(そうそう。そうに違いない!)


自分に言い聞かせて部屋を出た。

廊下を歩き出せば、中会議室から聞こえるハリのある声に胸がキュッとしてしまう。


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