ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に 2

上昇志向オンナに断り

19時。
オフィスビルの前に佇むチンピラ風な男。


「おぅ!」


人の顔を見るなりその言い草はなんだ。


「こんばんは」


わざと目線を合わさず一礼してやった。

顔を上げると目の前にいる浅黒い肌のヒョウみたいな男は、「ケッ…」と小さな声を漏らす。


「昨日も思ったけどやな感じ」


挨拶らしい態度を見せただけじゃないか。


「こっちこそ、その生意気な態度ムカつく」


ピクッと引きつる顔を眺めて、「話は?」と迫った。


「ノンビリしてるの嫌いなんだけど」


そもそも今夜はあんたのせいで英会話のレッスンを休むことになった。

だから早く家に帰って、今日やるべきだったところの復習をしておきたい。


「ここじゃ場所がマズい。他行こうぜ」


まるで決戦の果たし合いに来たような感じ。
立っていた場所の道路脇に停めてある車の中に乗り込み、助手席の窓を開けて叫んだ。


「乗れよ!」


乗るとも。


「はいはい」


言われなくても乗ってやる。
その為に定時に上がれるよう仕事を進めたんだから。

ーーーーーーーーーーー


昨日に引き続き、さっさと上がろうとする私を部署の全員は冷たい目で見ていた。


「先輩、手伝って下さいよ」


隣の席の後輩がヘルプを求める。


「ごめん。今日はこれから人と会う約束があって」


真実を言っただけなのに、冷たい…と責められた。


< 26 / 191 >

この作品をシェア

pagetop