ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に 2
差し出されたビールのグラスを見て、自分のワイングラスを持ち上げた。
コン…!と丸っぽい音を奏でたグラスが離れていって、目の前にいる男がビールを飲んだ。


「うっめー!」


ここは居酒屋か?と言いたくなる様な喜び方。


(まあ、でも…)


ゴクンと飲んだワインが、ゆっくりと食道を潤していく。


(しっかり味わわないと勿体ないし)


思わぬところで、以前通ったマナー教室での知識が役立ちそうだ。
こんないいレストランで食事することなんて、これから先もまずないと思う。



「いただきます…」


ポソリと囁いた声は力が入らなかった。
何も言ってこない男を気にも留めず、カトラリーを手に取った。


気づいていなかった。
最初から最後まで見られ続けていたんだということをーーー。




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