ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に 2
「ケイには幸せになって欲しいの!悔しい気持ちも知らず、キレイな恋愛をして欲しい!」



「……アホか」


運転席の男は呟いた。


「恋愛なんてキレイなもんかよ」


ガタンとシートを起こして続ける。


「あんたは聖人君主か何かのように恋愛を考えてんのか?ケイちゃんのことを思うのは勝手だけど、自分の思い出に摺り寄せんのは止めろよ」


バカバカしいというような顔をした。
一重まぶたのせいか、アッサリした顔つきが更にクールに見える。


「ホントに好きなら伝えるくらいしてもいいじゃん。そしたら案外うまくいくかもしれねーし、付き合うとまではいかなくても一晩くらいの相手にならしてもらえるかもしれねーだろ?相手は単純に人間なんだ。彼氏だろうが何だろうが、フツーに浮気くらいする時はするさ」


「なっ……」


なんてことを……


「大学の時がいい例だろ。元カノに言い寄られて擦り寄った。そしたら案外簡単にヨリが戻って、元サヤに収まったってだけだ。
あんたはその土俵を自分から降りた。自分の気持ちをきちんと伝えずに終わったから、ケイちゃんが同じ思いをするんじゃないかと穿って見てる。
同じ思いをしたくないのはあんたであって、ケイちゃんの方じゃない!」


向っ腹の立つような言葉を繰り返された。
怒鳴りつけたくなる気持ちを抑えて、相手の顔を睨み付けてしまった。


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