ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に 2
「裸眼って言ってもコンタクト入ってるけどね」

併用していた頃に使っていたものだ。


「やっぱり羅門さんじゃダメだったの?」

「あの人と恋人になるのはムリ。ケンカ相手の方が向いてる気がする」


お互いに印象が良くない。

私は向こうの無責任さが気に入らない。
向こうは私のすました態度が気にくわない。


「折り合えない感じ。恋が生まれる前に怒りが生まれちゃったの!」


そう言いながらも、あの男が言った通りに実行してみようと思うのはナゼか。
唆されたわけではなく、自分の中の感情を満たしたいと思っている。



「敬遠の仲っぽい感じになったの?」

「うん、二度と会わないと言った」

「そんなに何が…」


あったのかと聞きたそうなケイを見つめ、「まあ、もう終わったことだから」と付け足した。

ケイはガッカリしたような顔つきになり、その後は何も聞いてこなかった。

オフィスに着いたらフロアも違うし、お昼休みに時間が合ったら一緒にご飯を食べようと約束して別れた。

エレベーターの中に一人で乗り込み、最上階に近い階数のボタンを押す。

地下から上がるエレベーターの灯りを見つめながら、トクン、トクン…と騒ぎだす心臓。


今日、どこで、どんなシチュエーションで副社長と出会うだろうか。

羅門という男から、昨日の結末を聞かされているんだろうか。


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