ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に 2
書類の束を受け取りパソコンへ向かう。
カタカタ…とキーボードを叩きながら、外見が違っても立ち位置は変わらないんだと思い知った。



(コレと同じなんじゃないの?)


手を止めて少しだけ思う。
副社長に気持ちを伝えたところで、何も変わらないのではないか。

何かが変わって欲しくて伝えようとしているのではないけれど、何も変わらないのなら告っても仕方ない。

それなら告白する必要がない。
メガネまで外して、イメージチェンジを目論む意味もない。


「おデンワですよ」という声にハッとしてデスクの上を見た。内線ボタンが点滅しているのに気づき、慌てて受話器を持ち上げる。


「はい、経理部。横山です」


この内線電話にかかるのは私か隣の後輩に決まっている。…が、後輩はいつも電話に出られるほど仕事に余裕がなくて、必ず私が出るようになっていた。



「横山さん?俺だけど」


ドクンと心臓が跳ね上がった。

まさか、こんなシチュエーションでやってくるとは……



「あの…」


副社長ですよねと、聞き返してもいいんだろうか。


「昨日のことで話がある。後で中会議室に来てくれないか」


決戦の結末を聞かされたんだろうか。
強張った声のように聞こえるのは、私の心の中に疚しい感情があるせいなのか。


「わかりました。15分後に伺います」


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