ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に 2
呆れるくらいの消極性にぐうの音も出せず、私はそのデザイン帳のページを捲った。


ケイのデザインはシンプルだけど、優しさとアイデアがいっぱい詰め込まれてあった。
幼い子供やお年寄りが対象で、そういう人達にこそ扱える物が大事だと思ってるみたいだった。




「どう?」


目を真ん丸にして聞かれた。


「どうって……あったかい感じするし、ケイらしくて可愛いと思う。色合いもハッキリしてるけどキツくないし…」


赤ん坊も高齢者も視覚的にはハッキリした色合いの方がいいと聞いたことがある。
色別ができ難く、パステルカラーでは色が判別しにくいこともあるからだそうだ。


「原色のトーンを落として描いてるからなの」


自身の持つポスターカラーで色を調合したとか。
こんな特技があるなんて、今まで聞いたこともなかった。



「ケイ!」


私が大きな声を出したせいで、彼女の肩がビクッと飛び上がった。
オドオドした子猫のように真ん丸な目をしてる。


「な…何?」


どう言えばいいんだろう。



「す…」


スゴいねって言ったら緊張しちゃう?
でも。


「ステキ!スゴいよ、ケイ!」


単純に褒めちぎってしまった。


「私の肌見て!感動してトリハダ立ってる!」


ゾクゾクするような興奮を伴ってる。
ずっと自信のない子だとばかり思ってたけど、能ある鷹は爪を隠すタイプだったんだ。

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